トムラウシ山遭難事故、旅行会社元社長ら書類送検

国内夏山史上最悪となった遭難事故、安全管理を怠った疑い

2009年7月に北海道十勝管内新得町の大雪山系・トムラウシ山(2141メートル)で、縦走ツアー客とガイドの計8人が凍死した遭難事故について、北海道警は12月27日、ツアーを主催した旅行会社「アミューズトラベル」(東京)の元社長の自営業松下政市容疑者(58)とガイドの男3(1人は死亡)の計4人を業務上過失致死傷容疑で釧路地検に書類送検しました。

北海道警などによりますと、送検されたのは松下容疑者のほか、ツアーで死亡したリーダーガイドの吉川寛容疑者、当時(61)と、ガイドの無職多田学央(たかお)(40)、会社役員松本仁(47)両容疑者です。

去のツアー登山事故で、同行していない旅行会社幹部を立件するのは極めて異例のことです。北海道警は実況見分や関係者の事情聴取を重ね、事故の予見可能性や同社の管理態勢について捜査していました。公訴時効(10年)まで2年を切る中、刑事責任を問えると最終判断しました。国内の夏山史上最悪となった遭難事故の全容解明を進めています。北海道警は、元社長らの認否を明らかにしていません。

トムラウシ山遭難事故は、2009年7月16日に発生しました。

北海道警によりますと、4人は2009年7月16日未明から17日未明にかけて無理にツアーを続けて、縦走ツアーに参加した客15人のうち愛知、静岡、広島、岡山県の男女7人(当時59〜69歳)を、暴風雨の中遭難事故にあい、散り散りとなって凍死させたほか、広島市の女性(同61歳)に低体温症などのケガを負わせた疑いとのことです。また、リーダーだったガイドの吉川寛容疑者、当時(61)が低体温症で死亡していました。

元社長の書類送検容疑は、悪天候で引き返す場合の社内基準などを作成せず、安全管理を怠った疑いです。

同社が2012年に中国・万里の長城付近で企画したツアーでも、日本人旅行者3人が遭難事故死し、観光庁は旅行業者の登録を取り消していました。

大雪山系トムラウシ山遭難事故はツアー登山のあり方に一石を投じました。北海道内の夏山は今も高い人気を誇りますが、時間の経過とともに登山客らの危機意識の低下も指摘されています。ツアー会社関係者や山岳ガイドの多くは「余裕のある日程を組み、ガイドの技量向上に取り組み続けなければ」とトムラウシ山の悲惨な遭難事故を胸に刻んでいます。

「近年は地元でも遭難事故の記憶が薄れつつあった。(書類送検を機に)防寒具や余裕のある日程などの重要性を再認識させられた」と、トムラウシ山麓の十勝管内新得町で、新得山岳会事務局長を務める冨山幸朗さん(65)は話しています。

山岳関係者によると、トムラウシ山の遭難事故を受け、安価で過密日程のツアーを企画していた旅行会社の多くが、大雪山系などから撤退したようです。ただ、北海道警によりますと、2017年7、8月の山岳遭難は過去5年間で最多に並ぶ33件で3人が死亡しています。遭難者38人のうち、25人は道外客でした。